
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字を組み合わせた言葉です。狭義では企業の合併と買収を意味し、広義では事業の多角化などを目的とした資本提携を含むケースもあります。
本記事では、M&Aの基本を理解するために、M&Aの意味・実施する際の流れ・手法の種類・仲介サービスの費用など、M&Aについてゼロからわかりやすく解説します。
目次
M&Aとは?
M&A(エムアンドエー)とは、企業の「合併(Mergers)」と「買収(Acquisitions)」を指す用語です。英語の「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」(合併と買収)の頭文字を取って「M&A」と略されます。
企業や事業の資本移動を伴う売買や統合の総称であり、経営戦略・事業承継・業界再編などを目的に実施されることが多いです。
M&Aの手法は「狭義」と「広義」に分けられる
M&Aには、「狭義のM&A」と「広義のM&A」の2つの意味があります。
狭義のM&Aは、企業の「合併」と「買収」を指します。詳細は以下のとおりです。
一方、広義のM&Aでは、企業の成長戦略や市場拡大を目的とした資本提携(資本参加、合弁会社設立など)を含む場合もあります。
M&Aの目的
M&Aの目的は様々で、譲渡(売り手)企業と譲受(買い手)企業によって異なります。
M&Aの目的 | |
譲渡企業(売り手) | <事業承継の手段> ・後継者問題の解決 ・従業員やノウハウの承継(地域のインフラ確保) <資金調達の手段> ・創業者利益の獲得 <事業強化・拡大の手段> ・事業の整理 |
譲受企業(買い手) | <事業強化・拡大の手段> ・新規事業への参入 ・既存事業の強化 ・スケールメリットの獲得 |
以下ではM&Aの代表的な目的を3つ紹介します。
▷事業承継の手段として活用する
近年、中小企業では「経営者の高齢化」と「後継者不足」を背景に、事業承継を目的としたM&Aが増加しています。
日本は企業の約99%が中小企業で構成されており、廃業する中小企業が増えると地域のインフラや雇用が失われてしまいます。
M&Aによって第三者に事業を承継すると、技術やノウハウを次世代に継承できるだけでなく、地域のインフラや雇用を守ることができます。
▷関連記事:「譲渡企業の従業員のその後」
▷資金調達の手段として活用する
M&Aによって会社を売却できれば、譲渡企業の経営者は創業者利益を獲得でき、リタイア後の資金や新規事業の資金として活用できます。
また、複数の事業を営んでいる場合は、M&Aで事業の一部だけを売却することもできます。利益の少ない事業を売却することで、事業の整理と資金調達が同時にできるだけでなく、人材や資金を中核事業に集中できます。
▷関連記事:「M&Aによるハッピーリタイアの実現」
▷事業強化・拡大の手段として活用する
譲受企業では、既存事業の強化・拡大や新規事業への参入手段としてM&Aが活用されます。
販路開拓や新技術の取得には時間と費用がかかりますが、自社とシナジーが見込める会社をM&Aで譲り受けることができれば、一から事業を立ち上げる場合に比べて早く事業を軌道に乗せることができ、さらに、顧客や技術・ノウハウの獲得も期待できます。
その他、会社の規模拡大によってブランド力・認知度が高まり、競争力強化も期待できるでしょう。
▷関連記事:M&Aにおける買い手の狙いは?目的・メリット・成功事例を紹介
M&Aのメリット
M&Aを行うことで、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)にはそれぞれ次のようなメリットがあります。
メリット | |
譲渡企業(売り手) | ・後継者問題を解決できる ・従業員の雇用が守られる ・事業基盤を強化できる ・経営状況を改善につながる ・創業者利益を獲得できる |
譲受企業(買い手) | ・新規事業へ参入できる ・既存事業を強化できる ・事業拡大に伴うコストを削減できる |
M&Aのメリットについて以下で詳しく解説します。
▷譲渡企業(売り手)のメリット
M&Aによる譲渡企業(売り手)の主なメリットは、「後継者問題の解決」「従業員の雇用確保」「事業基盤の強化」「経営状況の改善」「創業者利益の獲得」ができる点です。
後継者が不在で事業の廃業を検討せざるを得ない場合でも、M&Aによって他企業に事業承継できれば、事業の継続と従業員の雇用を守ることができます。また、M&Aで大企業の傘下に入ることができれば、事業基盤の強化や経営状況の改善を実現できます。
また、事業売却で創業者利益(資金)を得られるため、他の事業で活用できたり引退後の生活資金として活用できたりする点もM&Aのメリットです。
▷譲受企業(買い手)のメリット
M&Aによる譲受企業(買い手)のメリットは、「新規事業への参入」「既存事業の強化」において時間・コスト・手間を削減できる点です。
M&Aによって異なる業界の企業を取り込めれば新規事業に参入でき、同じ業種の企業を取り込めれば既存事業を強化できます。
通常、新規事業を立ち上げる際は自社で一から事業を立ち上げる必要がありますが、M&Aによって異なる業界の企業を取り込めれば、時間やコストを抑えて新規事業に参入できます。
また、既存事業の規模拡大・マーケットシェア拡大を図る際も同様に、M&Aで同業種の企業を取り込めれば、自社で対応する場合と比べて時間や手間をかけずに既存事業を強化できます。
M&Aのデメリット
M&Aを行うことで、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)にはそれぞれ次のようなデメリットがあります。
デメリット(リスク) | |
譲渡企業(売り手) | ・最適な譲受企業が見つからない場合がある ・M&A後は従業員の待遇が変わる可能性がある |
譲受企業(買い手) | ・企業の統合には時間と手間がかかる ・期待するシナジー効果を得られるとは限らない |
M&Aのデメリットについて以下で詳しく解説します。
▷譲渡企業(売り手)のデメリット
M&Aによる譲渡企業(売り手)の主なデメリット(リスク)は、「最適な譲受企業が見つからない可能性がある」「M&A後は従業員の待遇が変わる可能性がある」点です。
M&Aの実施に向けて動き出しても、交渉相手が必ず見つかるとは限りません。仮に候補先が見つかり交渉を始めたとしても成約まで至らず、時間や労力を費やすだけで終わる可能性もあります。
また、譲渡企業の従業員は、M&Aの手法によって譲受企業の雇用の再契約が必要になる場合があります。待遇が改善される場合だけでなく、逆にM&A後の雇用契約が不利な内容に変わる可能性もあり、人材流出にもつながってしまいます。
▷譲受企業(買い手)のデメリット
M&Aによる譲受企業(買い手)の主なデメリット(リスク)は、「企業の統合には時間と手間がかかる」「期待するシナジー効果が得られるとは限らない」点です。
M&Aを行う場合、譲受・譲渡の候補となる企業の調査や交渉、契約の締結、契約締結後の統合作業などを行う必要があります。異なる企業の統合には時間と手間がかかります。
また、異なる風土や文化を持つ企業の統合は簡単ではありません。統合がうまくいかず期待するシナジー効果が得られないリスクもあります。
M&Aの流れ・プロセス

次は、M&Aが実際にどのように進んでいくのか、大まかなM&Aの流れを紹介します。
M&Aのプロセスは長期にわたりますが、大きく3つのフェーズに分けられます。
1)準備フェーズ 2)交渉フェーズ 3)最終契約フェーズ |
▷準備フェーズ
M&Aの初期的なプロセスが「準備フェーズ」にあたります。準備フェーズでは以下の対応を行います。
1 M&Aの相談・検討を開始する 2 自社の経営状況・純資産・負債などの状況を把握する 3 M&A仲介業者を選定してアドバイザリー契約を締結する |
それぞれ詳しく紹介します。
1 M&Aの相談・検討を開始する
M&Aを行う場合、まずは「M&Aを行うことが自社にとって最も適した選択か」を考えます。
M&Aの実施は、企業の将来に深く関わります。自社の経営方針と照らし合わせ、M&Aが経営戦略として妥当であるか慎重に検討しましょう。
また、「M&Aを行う目的」や「自社にとって譲れない条件は何か」などの洗い出しも大切です。M&Aを進めるとM&Aを行うこと自体が目的になってしまうことも多いため、検討段階で目的を明確にしましょう。
なお、M&Aには法務・財務・税務などの専門知識が欠かせません。悩みを抱え込まず、早期に専門家へ相談することが円滑な成約への近道となります。
▷関連記事:「M&Aの相談先は?一覧や費用、メリットなどを解説」
2 自社の経営状況・純資産・負債などの状況を把握する
M&Aの交渉を行う前に、交渉を行う際の好条件となり得る「自社の独自ノウハウや特許」や逆にトラブルとなり得る「簿外債務」などを含め、正確に自社の経営状況を洗い出すことが重要です。
好条件となり得る要素は、技術力・人材・取引先・人脈・知名度・ブランド・業界内でのシェア・販売ネットワークなど多岐に渡ります。幅広い視野から自社の強みを分析しましょう。
丁寧に洗い出しを行うと、その後の交渉がスムーズに進みやすくなります。
3 M&A仲介業者を選定しアドバイザリー契約を締結する
M&Aの実施を決定した後は、M&Aの仲介を依頼する業者を選択します。
M&AのサポートはM&A仲介会社への依頼が一般的ですが、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)・銀行・士業事務所などに依頼することもできます。
それぞれにメリットやデメリットがありますが、初めてM&Aを行う場合はM&Aのプロセスを一貫してサポートしてくれるM&A仲介会社をおすすめします。
その後、M&Aアドバイザーに依頼する場合には、M&A仲介会社に仲介業務を依頼する「アドバイザリー契約」を締結します。
M&Aのプロセスは長期にわたるため、実務を滞りなくこなすだけでなく自社に寄り添ってサポートしてくれる信頼性の高いアドバイザーを見つけることが重要です。実績・専門分野・担当者との相性を見極めながら慎重に選びましょう。
▷交渉フェーズ
準備フェーズが完了した後は、交渉フェーズに移ります。交渉フェーズでは以下のような対応が発生します。
4 ノンネームシートや企業概要書などの資料を作成する 5 M&Aのスキームを選択・決定する 6 トップ面談を行う 7 M&Aの基本合意を締結しデューディリジェンスを行う |
4 ノンネームシートや企業概要書などの資料を作成する
ノンネームシートは、企業が特定されない範囲の情報をまとめた資料です。M&Aアドバイザーが譲渡企業を譲受企業に紹介する際に使用します。
また、譲受を希望する企業にはノンネームシートに続き、より詳細な情報をまとめた「企業概要書」が開示されます。譲受企業はその内容をもとにM&Aを進めるか否かを判断します。
その他にも、M&Aを進めるにあたって60以上の資料が必要です。資料の準備には時間がかかるため、スケジュールを立て少しずつ資料をまとめておくとスムーズに準備を進められるでしょう。
5 M&Aのスキームを選択・決定する
「M&Aでどのスキームを用いるか」という検討も交渉フェーズで行います。
前述したように、M&Aスキームには株式譲渡以外にも会社分割や合併など様々な種類があるため、M&Aの目的に合わせた選択が必要です。
M&Aのスキーム次第で得られる効果や財務会計面でも違いが生じるため、最も効果的なスキームを選択できるよう、よく検討しましょう。
▷関連記事:「M&Aの8つの手法と仕組みを徹底解説!企業買収の事例も紹介」
6 トップ面談を行う
M&Aを進めたいパートナー企業が見つかった後は「トップ面談」を行います。
多くの場合、候補先企業が2~3社ほどになったタイミングで実施され、主に譲渡企業と譲受企業の経営ビジョンや譲渡後の運営方針など、お互いの理解を深める場になります。
また、後述するデューディリジェンス時に譲渡企業の不利な情報が明るみになると、不信感につながり交渉破談の可能性が高くなるため、自社にとって不利な情報がある場合はトップ面談時に伝えましょう。
7 M&Aの基本合意を締結しデューディリジェンスを行う
トップ面談後、M&Aを進める相手企業が決定したら「基本合意書」を締結します。基本合意書では、これまでの条件を整理し譲渡価額やスケジュールなどを定めます。
また、基本合意書締結後には、譲受企業が譲渡企業に対して「デューディリジェンス」と呼ばれる企業調査を行います。
デューディリジェンスでは、譲受企業が選定した第三者の専門家が法務や税務などの観点から譲渡企業を調査します。
譲渡企業の規模や事業内容によりますが、中小企業の場合、現地での実査に1~4日程度、買収監査レポートが完成するまでに約1~2週間の時間を要します。なお、デューディリジェンスの結果を鑑みて、最終的な譲渡対価などが決定されます。
▷関連記事:法務デューディリジェンス(法務DD)とは?目的や費用、チェックリストを解説
▷関連記事:M&Aにおける人事の課題とは?人事デューディリジェンスや人事PMIを解説
▷関連記事:財務デューディリジェンス(財務DD)とは?目的や流れ、チェックリストを解説
▷関連記事:税務デューディリジェンス(税務DD)とは?目的やリスク、調査範囲について解説
▷関連記事:ビジネスデューディリジェンス(ビジネスDD)とは?目的や進め方について解説
▷最終契約フェーズ
最終契約フェーズでは基本合意の段階で合意した事項にデューディリジェンスの結果を反映させ、最終契約の締結を進めます。
その後、クロージングを実施し、M&Aに伴う事後処理であるPMIを行います。
8 M&Aの最終契約を締結する 9 クロージングを行う 10 M&Aの事後処理を行う 11 PMI(M&A後の企業統合)を進める |
8 M&Aの最終契約を締結する
「最終契約」はM&Aに関する最終的な合意内容となる契約で、主に取引金額・表明保証・補償条項・解除条件などが含まれます。
条件面で最終的な合意が得られたら、「最終契約書」を締結します。最終契約書に記載される主な項目は以下のとおりです。
・譲渡対象 ・譲渡価額 ・支払方法・時期 ・表明保証条項 ・クロージングの前提条件 ・付帯合意 ・競業避止義務 ・契約の解除事由 |
最終契約書は基本合意の内容をもとに作成されるケースが多いため、基本合意時の内容確認が重要です。なお、基本合意には上記のような事項についての法的拘束力はありませんが、ここで取り交わす最終契約には法的拘束力が発生します。契約内容の確認は十分に行いましょう。
▷関連記事:M&Aで必要な契約書は?種類や最終契約書(DA)の項目を解説
9 クロージングを行う
「クロージング」は最終契約に基づいた経営権の移転手続きです。クロージングを行うことでM&Aの手続きが完了し、成約となります。
クロージングは、引き渡しや支払いなど合意内容を実行し、M&Aの効力を対外的に成立させる重要なプロセスです。誤りが発生しないよう細心の注意を払う必要があります。
10 M&Aの事後処理を行う
クロージングによる経営権の移転手続き後には「M&Aの事後処理」を行います。
新体制発足に伴う臨時株主総会の開催や、変更が必要な場合は定款の変更、代表取締役を新任する際は取締役会の実施など、事後処理の内容は様々です。
11 PMI(M&A後の企業統合)を進める
最終契約が締結し、周囲へのアナウンスが済み次第、PMI(Post Merger Integration)を行います。
PMIとは、当初に計画したM&A後の統合効果を最大化するために行う統合手続きのことで、PMIを短期間で効率よく行えるかどうかがシナジー効果の創出を大きく左右します。
M&Aでは異なる企業同士が統合されるため、業務の混乱や社員の離職などが生じやすくなります。このような事態をできるだけ避けるために、PMIが行われます。
M&Aの手法

M&Aにおける手法の種類は上図のとおりです。一般的な中小企業のM&Aは、「企業譲渡」を指し、手法としては「株式譲渡」が多く用いられます。
M&Aで活用されることの多い手法としては以下の9つが挙げられます。
それぞれ順に解説します。
▷株式譲渡

株式譲渡は、中小企業のM&Aで最も活用されるスキームの1つです。売り手企業のオーナーが持つ株式を買い手企業に譲渡することでM&Aが成立します。
株主の構成は変わるものの法人格は維持できるため、事業承継などを目的としたM&Aで頻繁に用いられる手法です。
▷事業譲渡

事業譲渡は、売り手企業の一部(もしくは全部)の事業を切り出して買い手に譲渡する手法です。売り手は譲渡したい部分だけを譲渡でき、買い手は譲り受けたい部分だけを譲り受けられるため、どちらにとっても便利な手法といえます。
ただし、資産や契約などを個別に移転させる必要があるため、時間と手間がかかります。
事業譲渡は、譲渡企業の経営者が一部の事業だけを譲渡したい場合や、譲受企業が赤字の事業や発生する可能性の高い簿外債務を承継したくない場合などに多く利用されます。
▷会社分割

会社分割は、譲渡企業の特定の事業を他の会社に承継させる手法です。
会社分割と同時に新しく設立する会社に当該特定事業を切り出す場合を「新設分割」と呼び、切り離された事業が既存の会社に承継される場合を「吸収分割」と呼びます。
吸収分割は事業譲渡と効果が似ていますが、前者は「包括承継」、後者は「個別承継」と呼ばれ、その内容は大きく異なります。
▷株式交換

株式交換は、譲渡企業が譲受企業の100%子会社となる会社法上の組織再編行為を指します。
基本的には譲受企業が上場企業の場合に用いられることが多いです。譲渡企業の株主が保有する株式を譲受企業に譲渡する代わりに、譲受企業の株式が交付されます。
▷合併
合併は、複数の会社を1つの会社に統合する手法です。
合併を行う会社が全て解散して、合併と同時に新しく設立される会社に解散した会社の資産や権利を承継する「新設合併」と、既存の会社が他の会社の資産や権利を承継する「吸収合併」の2つに分けられます。
▷第三者割当増資
第三者割当増資は、企業が新たに株式を発行して特定の第三者に株式を割り当てることを指します。
既存の株主は対価を受領せず、企業が当該第三者から金銭などを受け取ることにより財務基盤を強化できます。
▷資本業務提携
資本業務提携は、複数の企業同士が「資本の移動」と「業務の協力」の両方を行う手法です。通常、資本の移動には第三者割当増資が用いられます。
資本業務提携は資本の移動を伴うため、企業同士が強固な関係を築ける一方、提携の解消が難しいというリスクがあります。
なお、M&Aとは異なりますが、業務提携という手法もあります。業務提携は、複数の企業が資本の移動を伴わず業務だけで協力する方法です。資本が移動しないため、資本業務提携に比べて企業間の関係は緩やかで、提携解消も柔軟に行えます。
資本業務提携や業務提携は、複数の企業が互いの利益のために協力し合う「アライアンス(alliance)」の一種です。
▷資本参加
資本参加は、対象企業の株式を取得して企業間の関係性を強固にする手法です。資本提携は企業同士がお互いの株式を取得するのに対して資本参加は一方の企業のみが株式を取得します。
資本参加では、通常50%未満(場合によっては数%に留まることもあります)の株式の取得となり、対象企業の独自性を保つことができます。
第三者割当増資による資本参加では資金が対象企業に払い込まれるため、成長資金の調達に活用される手法です。
▷合弁会社設立
合弁会社設立は、複数の企業が共通の利益のために共同で会社を設立または取得する手法です。公正取引委員会の企業結合ガイドラインでは「共同出資会社」という名称になります。
合弁会社の設立には、既存の会社を活用して、株式譲渡・第三者割当増資・吸収分割を経て合弁会社とする方法と、共同新設分割で経て新たに合弁会社を設立する方法の2種類があります。
M&Aで重要な企業価値評価(バリュエーション)の算定方法
M&Aでは譲渡企業(売り手)が自社を売却する際に売却価格を算定する必要があり、そのために行うのが企業価値評価(バリュエーション)です。企業が有する資産や事業・人材・技術・将来的な収益性などを総合的かつ客観的に評価して数値化します。
企業価値評価の算定方法には主に以下の3つです。
▷関連記事:「M&Aのバリュエーション(企業価値評価)とは?意味・重要性から算定方法まで」
▷コストアプローチ
コストアプローチは、企業の資産・負債をもとに価値を算定する方法で、中小企業のM&Aで採用されることが多い手法です。
コストアプローチの代表的な算定方法には「簿価純資産法」「時価純資産法」「時価純資産法+営業権(のれん)」などがあります。
算定方法 | 特徴 |
簿価純資産法 | ・B/Sの資産と負債を基に純資産額を計算して株式価値を算定する方法 ・算出が簡単かつ客観性を保つことができるメリットがある |
時価純資産法 | ・現時点の資産や負債を時価に置き換えて純資産を計算して株式価値を算定する方法 ・現時点での資産や負債を評価に反映できるメリットがある |
時価純資産法+営業権(のれん) | ・時価に置き換えた純資産に、営業権(のれん)を加算して株式価値を算出する方法 ・ブランド力やノウハウなど帳簿で評価できない要素を反映できるメリットがある |
▷インカムアプローチ
インカムアプローチは、企業で将来期待される収益をもとに価値を算出する方法で、大企業のM&Aで用いられることが多い手法です。
例えば、DCF法では、フリーキャッシュフローの予測をもとにWACC(加重平均資本コスト)などの割引率を使用して割り引いた現在価値を計算します。
なお、目に見えない将来性を評価するため、情報の収集に時間がかかる傾向があります。
インカムアプローチの代表的な算定方法には「DCF法」「配当還元法」などがあります。
算定方法 | 特徴 |
DCF法 | ・対象企業のキャッシュフローを基に現在の価値を割り引いて株式価値を算定する方法 ・幅広い企業の価値を算定できるメリットがある |
配当還元法 | ・将来的な配当金を基に株式価値を計算する方法 ・期待配当金や配当金成長率などの数値がわかれば簡単に計算ができるメリットがある |
▷マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、類似企業の株式市場やM&A市場での相場と比較して評価する方法で、大企業のM&Aで用いられることが多い手法です。市場の情報をもとにして価値を評価するため、客観性を担保できる点が特徴です。
例えば、類似企業比較法ではEBITやEBITDAが指標として用いられます。大企業は財務状況が公開されているケースが多いため、比較的容易に計算できる点がメリットです。
マーケットアプローチの代表的な算定方法には「類似企業比較法」「市場株価法」などがあります。
算定方法 | 特徴 |
類似企業比較法 | ・類似の上場企業を選定し、それぞれの財務状況を基に株式価値を算定する方法 ・データの取得が容易で、客観性を担保できるメリットがある |
市場株価法 | ・株式市場に公開された株価を基に株式価値を算定する方法 ・市場原理による客観性を担保できるメリットがある |
M&Aに関する会計
譲渡企業・譲受企業それぞれにおけるM&Aの会計処理は、M&Aの手法(スキーム)によって異なります。
例えば「株式譲渡」では譲渡側と譲受側の双方で会計処理が必要になりますが、「株式交換」では、基本的に、株式を譲り受けて親会社になる譲受側のみが会計処理を行います。一般的に、株式交換では「親会社」となる会社は子会社株式を資産計上し、資本金・資本剰余金を増額させる会計処理を行います。
また、「第三者割当増資」では増資額を資本金として計上しますが、払込額の1/2を超えない額までは資本金ではなく資本準備金として計上が可能です。
M&Aの手法(スキーム)ごとの仕訳方法や会計処理上の注意点については以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。
▷関連記事:「M&Aと会計。仕訳(会計処理)とのれんの扱い方をわかりやすく解説」
▷関連記事:「買収時の仕訳とは?株式譲渡・事業譲渡の会計処理について」
M&Aに関する税務

M&Aの実行に伴って税金が発生する場合は、納税期限までに税金を納付する必要があり、納税資金を準備しなければなりません。納税資金の準備で困ることがないように、課税される税金の種類や金額をあらかじめ確認しておきましょう。
M&Aにかかる税金の種類や計算方法は個人・法人で異なり、株式譲渡や事業譲渡などの手法によっても違いがあります。以下では、株式譲渡と事業譲渡にかかる税金について解説します。
▷株式譲渡にかかる税金
株式譲渡を行った場合、譲渡企業(売り手)には、売却によって得た譲渡所得に対して税金がかかります。一方、譲受企業(買い手)には原則、税金がかかりません。そのため、以下では譲渡企業(売り手)が支払う税金を解説します。
株式譲渡を行った際に発生する税金は、主に「所得税」「住民税」「法人税」の3種類です。
課税対象者 | 税金の種類 |
個人 | ・所得税:15.315%(含:復興特別所得税) ・住民税:5% |
法人 | ・法人税等:約30%(実効税率) |
譲渡企業は、株式の売却によって得た譲渡所得に対して税金を支払います。個人であれば「所得税+住民税」、法人であれば「法人税等」を納税する必要があります。また、2037年までは株式の取引に対して復興特別所得税が課されます。
個人の場合は、株式の譲渡益に対して20.315%(所得税15.315%(うち復興特別所得税0.315%)、住民税5%)の税金が課税されます。法人の場合は、約30%の法人税等が課税されますが、事業が赤字の場合や繰越欠損金がある場合などは課税対象となる法人所得が減るため、その分だけ法人税額が減少します。
▷事業譲渡にかかる税金
事業譲渡の場合、譲渡企業(売り手)は、株式譲渡同様、売却によって得た譲渡所得に対して税金を支払いますが、譲り受ける資産によっては譲受企業(買い手)も納税が必要です。そのため、以下では譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)それぞれが支払う税金を解説します。
まず、事業譲渡によって譲渡企業(売り手)にかかる主な税金は以下のとおりです。
かかる税金 | 税率・課税対象 |
法人税等(法人税・地方法人税・法人住民税・事業税など) | ・税率:約30%(実効税率) ・課税対象:譲渡による売却益 |
消費税(納付義務のみ) | ・税率:原則10% ・課税対象:棚卸資産や土地以外の有形固定資産など |
譲渡企業は、事業譲渡によって得た譲渡所得に対して税金を支払います。事業を譲渡した対価として現金などを受け取った譲渡企業には、法人税・地方法人税・法人住民税・事業税などが課されます。
一方、譲受企業(買い手)が支払う可能性のある税金は、以下のとおりです。
かかる税金 | 税率・課税対象 |
消費税 | ・税率:原則10% ・課税対象:棚卸資産や土地以外の有形固定資産など |
不動産取得税 | ・税率:4%(土地・住宅用家屋3%) ・課税対象:土地・建物などの不動産 |
登録免許税 | ・税率:建物2%、土地1.5% ・課税対象:土地・建物などの不動産 |
例えば、譲渡対象資産に土地や建物が含まれている場合には不動産取得税がかかり、所有権移転登記の際には登録免許税の納付が必要です。
譲渡対象資産に設備や店舗など消費税の課税対象資産が含まれる場合、10%の税率をかけて譲受企業が譲渡企業に支払い、譲渡企業が納税を行います。
M&Aの相談先と選び方のポイント
M&Aでは法務・税務・会計などの専門的な知識が必要になるため、自社のみで検討や手続きを行うのではなく専門家に相談・依頼して進める流れが一般的です。
M&Aで失敗しないためには自社に適した専門家を探すことが重要であり、長期間にわたるM&Aの検討・対応を信頼できる相談先と一緒に進められるかどうかがポイントになります。
以下では、M&Aの主な相談先と選び方のポイントを紹介します。
▷M&A仲介会社(M&A専門コンサルティング会社)

M&A仲介会社とは、M&Aの仲介業務を行う会社のことで、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)の間に立ち双方の希望をすり合わせながらM&A成約までをサポートします。
事前相談からM&A候補先の選定・企業価値評価・ノンネームシートや企業概要書の作成・基本合意・最終契約締結まで、M&Aの全てのプロセスでサポートを受けられます。
M&A仲介会社を選ぶ際は、報酬体系の違いや得意な業種・地域の違い、PMIへの対応の有無、過去の実績などで複数の会社を比較して、自社に最も適した仲介会社に依頼しましょう。
▷ファイナンシャル・アドバイザー

ファイナンシャル・アドバイザーは、M&Aにおける計画の立案から成約に至るまでの一連の助言業務を行います。
譲渡企業と譲受企業の仲介を行うM&A仲介会社とは異なり、契約を結んだ譲渡企業または譲受企業いずれか一方の利益を最大化するためにサポートを行う点が特徴です。
大手証券会社や投資銀行などが該当し、中小企業を対象とした案件は基本的には取り扱わないため、中小企業がM&Aの相談先を探す場合はM&A仲介会社など他の専門家への依頼がおすすめです。
▷M&Aマッチングサイト(M&Aプラットフォーム)
M&Aマッチングサイトとは、オンライン上で譲渡企業や譲受企業を探せるサービスのことです。サイトに登録されている案件の中からM&Aの交渉相手を探し、交渉をリクエストしてM&A成立に向けて交渉する仕組みです。
M&A仲介会社に比べると費用が安く済むことが多く、費用を少しでも抑えたい場合にはおすすめですが、専任のサポート担当が付かないケースが多いためM&A仲介会社などに比べると専門家によるサポートを十分に受けられない可能性があります。
▷事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置している公的な相談窓口です。親族内への承継や第三者への承継など、中小企業の事業承継に関する相談に対応しています。
事業承継・引継ぎ支援センターでは無料で相談ができ、全国47都道府県に設置されています。譲渡の進め方のアドバイスや譲渡先の紹介を行うとともに、譲渡条件のすり合わせや各種書類作成などに必要な専門家の紹介を行っています。
▷金融機関(メガバンク・地方銀行)
金融機関によってはM&A関連業務を行っている場合があります。金融機関が保有する顧客情報を活用して売却・買収の候補企業を紹介するマッチング支援を行っている場合や、顧客の事業内容や財務状況を踏まえてM&Aに関するアドバイスを行っている場合などがあります。
日頃から取引のある金融機関にM&Aの相談をすれば、自社の状況を理解しているため的確なアドバイスやサポートを受けることができ、M&A以外の選択肢も含めた相談が可能です。
▷士業事務所
M&Aでは法務や税務・会計・労務など専門的な知識が必要です。各分野の専門知識を必要とする場面では、その分野を専門とする士業に相談すれば必要なアドバイスやサポートを受けられます。
M&Aに伴う会計処理や財務諸表の作成、税金の申告・納税などは公認会計士や税理士に、法的な問題点やリスクを洗い出す法務デューディリジェンスや契約書の作成などは弁護士への相談がおすすめです。その他、必要に応じて社会保険労務士や中小企業診断士に相談するケースもあります。
M&A仲介サービスの費用・手数料
M&A仲介会社に依頼する場合に一般的にかかる費用の種類や金額の目安は以下のとおりです。
料金 | 相場 |
相談料・着手金 | 無料~数百万円 |
月額報酬(リテイナーフィー) | 無料~数百万円 |
中間報酬 | 成功報酬の10~30% |
成功報酬 | レーマン方式によって算出 |
デューディリジェンスの費用 | 数十万円~数百万円 |
報酬以外の費用 | 内容により様々 |
相談料や月額報酬の有無は会社によって異なります。
中間報酬は、相手先が見つかってM&Aの基本合意を結んだ時に支払う手数料です。M&Aが成約しなかった場合も返金されませんが、M&Aが成功した場合は一般的に、成功報酬に充当されます。
成功報酬の計算で使われる「レーマン方式」とは、取引金額に応じて報酬料率が変わる報酬体系です。譲渡金額が大きいほど手数料率は低くなり、譲渡金額が少ないと手数料率は高くなる仕組みで、多くのM&A仲介会社で採用されています。
▷関連記事:「M&Aの手数料相場は?成功報酬の計算方法や仲介会社の報酬体系も解説」
▷関連記事:「M&Aにかかる手数料はどのくらい?費用相場や種類、計算方法を解説」
M&Aを成功させるための注意点とポイント
M&Aを成功させるために押さえておきたいポイントは次の4つです。
・秘密保持を徹底し情報漏洩を防ぐ ・デューディリジェンスでリスクを洗い出す ・従業員・取引先への説明は適切なタイミングで丁寧に行う ・M&A仲介会社にサポートを依頼する際は契約内容を十分確認する |
以下でそれぞれ解説します。
秘密保持を徹底し情報漏洩を防ぐ
M&Aでは、財務・人事・ノウハウなど重要性の高い秘密情報を開示します。
万が一情報が漏洩すると、自社の事業に影響したり、企業イメージ・社会的信用が失墜して取引先から信頼を失ったりする事態になりかねません。
重要な情報の開示は秘密保持契約を締結してから行うなど、情報管理を徹底しましょう。
デューディリジェンスでリスクを洗い出す
譲渡企業に対するデューディリジェンスが不十分な場合、最終契約締結後に問題が発覚し、譲受企業が当初想定していなかったリスク・負担を負う可能性があります。
簿外債務や係争中の事案がないかなど、財務・法務をはじめとする様々な観点から買収候補先の企業調査を行い、リスクを事前に洗い出すことが重要です。
従業員・取引先への説明は適切なタイミングで丁寧に行う
従業員や取引先には、M&Aを行うこととその影響について、適切な時期に丁寧に説明することが大切です。
方向性がきちんと定まっていない段階でM&Aに関する情報が伝わってしまうと、具体的な内容やその影響について説明できず従業員や取引先に不安を与え、離職や取引中断などの事態につながってしまいます。
混乱を起こさないためにも、従業員や取引先にはM&Aの実施と具体的な内容が確定した後に説明するようにしましょう。
M&A仲介会社にサポートを依頼する際は契約内容を十分確認する
M&A仲介会社は、得意分野や報酬体系などもそれぞれの会社で異なります。M&A仲介会社にサポートを依頼する場合は、事前にHPなどを確認して特徴を把握するとともに、サポート内容や報酬額などをはじめ、契約書の内容を十分理解しておきましょう。
業務形態・サポート内容の範囲・契約期間・報酬(手数料)体系・M&Aの取引実績・利用者の声などを比較・検討し、依頼する会社を決めるとよいでしょう。
【2024年度最新】M&Aの成功事例
近年は様々な業界でM&Aが実施され、中には世間を賑わせるようなM&Aも行われました。
以下では、特に話題となったM&Aの最新事例を一部紹介します。
2024年1月|積水ハウスによる米住宅会社の買収
2024年1月、大手住宅メーカーの積水ハウスは戸建住宅事業を手掛ける米国の住宅会社であるM.D.C.ホールディングスを、米国子会社を通じて約49億ドル(約7,200億円)で買収することを発表しました。
積水ハウスはこれまで米西部や南部で事業買収を通じて事業展開を続けてきましたが、今回の買収で米東部への進出が行われます。
2024年8月|JTによるベクター・グループの買収
2024年8月、たばこ・医薬品・加工食品を取り扱う日本たばこ産業(JT)は、米国4位のたばこ会社であるベクター・グループの全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。買収額は約3,780億円になり、2024年10月に完了しています。
国内たばこ事業の減速を背景に、JTは海外事業を強化するため新興国を中心にM&Aを実施していました。今回の買収は、JTにとって過去4番目の規模の買収となり、米国たばこ市場でのシェアを拡大し存在感を高めていくことを目指しています。
2024年10月|日本ペイントホールディングスによるAOCの買収
2024年10月、塗料大手の日本ペイントホールディングスは、米化学メーカーのAOCを傘下に持つ持ち株会社を買収することを発表しました。買収総額は約6,300億円になります。
AOCはコーティング剤原料などの多様な化学品において高いシェアを持ち、高い収益性を維持しています。今回、日本ペイントホールディングスは高収益企業の買収により、利益の増大を見込んでいます。
fundbookのM&A成約事例
以下では、株式会社fundbook(当社)のM&A成約事例を一部ご紹介します。

“らしさ”まで受け継ぐ、地域に愛される創業社長のM&A
譲渡企業:株式会社コアー建築工房
譲受企業:三和建設株式会社
1989年、吉瀬融氏が35歳の時に創業した株式会社コアー建築⼯房は、創業1年目から売上1億円を達成し、地域の木材を使用した「⾃然と調和したこだわりの家」を掲げ、⼤阪南部を中⼼に厚い顧客基盤とブランド⼒を持つ注⽂住宅企業へと成長しました。
そして過去最高利益を記録した2020年6月に、三和建設株式会社とM&Aを成約しました。
地域に愛される創業社長のM&Aはどのように決断されたのか、吉瀬氏、三和建設株式会社代表の森本尚孝氏、専務取締役の谷直人氏を交えてお話をうかがいました。

地方IT企業が異業種M&Aで描く成長戦略
譲渡企業:株式会社トラステック
譲受企業:マルソー株式会社
株式会社トラステック代表取締役の島淳一氏は、1998年に地元の新潟県で同社を設立して以来、生産管理システムの開発や企業からのシステム受託開発事業などを展開してきました。
還暦を迎えた頃から事業承継について考え始め、当初M&Aという手法は有力候補ではなかったものの、会社の将来性を高める「戦略的なM&A」に活路を見出し、県内屈指の物流・運送企業であるマルソー株式会社と2020年9月にM&Aを行いました。
成約までの経緯や、ITと物流の異業種間によるM&Aで広がる可能性について、トラステックの島氏と役員の皆様、そしてマルソーの代表取締役社長である渡邉雅之氏にうかがいました。

ファンドと手を組みIPOへ、上場戦略としてのM&A
譲渡企業:株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング
譲受企業:インテグラル株式会社
株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング(以下、BTC)は、テクノロジーとコンサルティングを融合した従来のSIerとは一線を画すビジネスモデルによって、官公庁や数多くの大手企業をクライアントに持つ少数精鋭企業です。
同社のさらなる成長のために上場という目標を掲げた創業者の大木塁会長は、2018年にプライベート・エクイティ(PE)ファンドのインテグラル株式会社へ自身が保有する株式を譲渡しました。
M&Aは上場戦略としても活用できるという成功事例です。
ここまで、fundbookが仲介・支援したM&Aの成約事例の一部をご紹介いたしました。他の事例もご覧になりたい方はこちらをご参照ください。
また、fundbookではご希望の方には、M&Aアドバイザーが初回は無料にてM&Aの相談を承ります。M&Aに興味をお持ちの方は、この機会をご活用ください。
日本のM&A市場と今後の動向
中小企業を中心にM&Aが増加傾向にある背景には、主に「後継者の不在」と「経営者の高齢化」という2つの要因があります。
帝国データバンクの調査によると、2023年時点の社長の全国平均年齢は60.5歳と過去最高を更新しています。また、2024年の後継者動向の調査で「後継者がいない又は未定」と回答した企業の割合は52.1%であり、半数を超えている状況です※1※2。
近年は親族や社内で後継者が見つからず、現経営者の高齢化に伴って廃業を余儀なくされるケースが少なくありません。この背景がある中、M&Aは今後も事業承継の手段として、さらに必要性が高まるものと予想されます。
※1出典:帝国データバンク「全国「社長年齢」分析調査(2023年)」
※2出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)」
M&A件数の推移
中小企業庁が公表する中小企業白書によると、日本企業が関わるM&A件数(企業規模問わず)は近年増加傾向にあり、2022年度には過去最高の4,304件を記録しました※1。M&Aが活発であることが以下のグラフからも見て取れます。

なお、このうち事業承継・引継ぎ支援センターを介したM&A成約件数は2023年度に2,023件を記録し、直近10年間で約120倍にまで増加しています※2。
また、中小企業庁によると、国内の中小企業に限った場合のM&A件数も着実に増加しています。2021年度の件数は2014年度と比較すると約6.7倍にまで増加しています※3。

※1出典:中小企業庁「中小企業白書2024年版」
※2出典:中小企業庁「令和5年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について」
※3出典:主要M&A仲介会社及び事業承継・引継ぎセンターでの成約件数を合算したもの 中小企業庁「「中小M&A推進計画」の主な取組状況」より作成
まとめ
M&Aは事業拡大・新規参入・事業承継など多様な経営課題の解決手段であり、企業の成長と従業員の雇用確保を同時に実現できる有力な選択肢です。
近年、M&Aの件数は増加傾向にあり、M&Aは企業にとって経営戦略上の重要な選択肢の1つです。M&Aを検討する際は法務・税務などの様々な専門知識が必要になるため、M&A仲介会社をはじめとする専門家に依頼し、検討を行います。
fundbookでは、M&Aアドバイザーの専門的な知見やテクノロジー、AIなどを活かし、豊富なネットワークを活用しながら最適な相手を見つけて譲渡企業・譲受企業のマッチングを行っています。各業界に精通した業界専門チームが在籍するため、業界特有の環境や課題を踏まえたサポートが可能です。M&Aを検討中の方はfundbookにお気軽にご相談ください。
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【動画で解説】 M&Aとは? ~目的・手法・メリット・流れ~
以下の動画では、M&Aの目的や手法、メリットなどについて簡単に紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。